モバイルラーニングに興味がある人は多いのではないでしょうか。昨今、教育や社員研修でモバイルラーニングはよく利用されています。実際、世界的に有名な企業、ジョンソン・エンド・ジョンソンやオーティコンなどで導入されており、社員や関係者の生産性向上につながっています。
本記事では、モバイルラーニングの意味や重要性、メリットとデメリットを解説します。あわせて、社員教育におけるモバイルラーニングの活用法や事例もご紹介します。また、コース作成方法や注意点もお伝えします。
この記事を読み終えることで、モバイルラーニングの理解が深まり、また、社員教育への活用法や魅力的なコースの作り方がわかり、社員の知識の定着率を高めることができるようになります。まずは、モバイルラーニングの意味から確認していきましょう。
モバイルラーニングとは?
モバイルラーニング(mラーニング)とは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を利用して学習することです。持ち運びが可能なので、いつでもどこでも学ぶことができます。mラーニングを使えば、学生は自分のモバイル端末で、指定されたレッスンやビデオ講義を学んだり、テストを受けたりすることが可能です。
モバイルラーニングの重要性
モバイルラーニングは、授業中や試験中にオンラインで何かを検索するという、学生の間での単なるトレンドや一般的な習慣ではありません。モバイルラーニングは、「モバイル」がデバイスだけでなく学習者自身も含む、根本的に異なる学習アプローチです。過去数十年の間に、人々のモバイル化が進みました。モバイル化は、知識を習得し実践するために必要な学習方法にも影響を与えています。
もう特定の場所や特定のスケジュールに縛られることはありません
モバイルラーニングでは、インスタグラムの15秒のストーリーを見るのと同じような形で学ぶことができます。もちろん、モバイルラーニングは完璧な学習ソリューションではありませんし、理論物理学のような複雑で抽象的なプロセスや概念を学ぶようには設計されていません。しかし、高等教育や企業などで、知識の定着を高めるために利用される再教育コースやインタラクティブなクイズにはうってつけです。
次に、モバイルラーニングのメリットとデメリットを見ていきましょう。
モバイルラーニングのメリット
・利用しやすさ:学習者は、必要なときに必要な教材にアクセスすることができます。ポケットからスマートフォンを取り出すだけで学習可能です。
・使いやすさ:mラーニングは実践的でタスク指向型です。ハウツー、ステップバイステップのチュートリアル、簡潔なガイド、ミニ演習など、新しいスキルの実践に役立つあらゆるものに最適です。
・利便性:コースやエクササイズはタスクベースなので、毎日のスケジュールに簡単に組み込めます。
・コミュニケーション:学習者は同僚やインストラクターに連絡を取り、必要なサポートをすぐに受けることができます。コメントを残したり、ディスカッションフォーラムに参加したり、コミュニティの一員としてつながりを保つことができます。
・エンゲージメント:学習者は、身近なモバイル端末で学習できます。結果、研修はインタラクティブになり、より自然に学習できるようになります。
モバイルラーニングのデメリット
・モバイル端末の違い:モバイル端末によって、ストレージや処理能力に違いがあるかもしれません。ストレージが不足していたり、処理速度が低いと、モバイル学習の妨げになる可能性があります。
・インターネット接続:携帯電話の電波が届かないような遠隔地では、インターネット接続が問題となります。
・誘惑:ソーシャルメディアをスクロールしたい衝動、ビープ音による通知、先延ばし、一般的な日常業務などが、研修の妨げとなり、学習効果を低下させる可能性があります。学習者は、デバイスを使用している間、集中力を維持するために手助けが必要になるかもしれません。
モバイルラーニングとeラーニングの違い
モバイルラーニングとeラーニングを区別する特徴は、コンテンツ配信のプラットフォームとしてモバイル端末を使用することだけではありません。他の違いとはいったい何でしょうか?その違いを見ていきましょう。
目的の違い
基礎的な知識を深く学びたいのであれば、eラーニングで十分です。しかし、再教育を開始したり、習得した知識を体系化したりする必要がある場合は、モバイルラーニングが確実な選択肢となります。mラーニングの目的は、学習プロセスのサポートと多様性を高めることです。学習者は、独立した小さな情報の塊に瞬時にアクセスできるようになり、外出先や時間が空いたときに学習することができます。
言語学習を想像してみてください。あなたが文法の時制を教えたい場合、学習者にそのトピックの全体像を理解してもらうために、構造化された方法で教えたいと思うのではないでしょうか。その場合、eラーニングレッスンでも十分でしょう。
しかし、モバイルラーニングを使えば、学習者は自分のデバイスで知識をブラッシュアップしたり、練習問題を解いたり、短い動画を見たりすることができます。また、Eメールを書いていて時制の正しい使い方がわからない場合など、必要な時にすぐ、関連動画を確認することができます。つまり、mラーニングは、あらゆるタイプの学習において、より高い定着率と学習への関与を保証するブースターとなります。
レッスン時間の違い
レッスン時間の目安を知るため、学習が行われる状況を想像してみましょう。既存のオンラインコースは、通常、Wi-fi接続の整ったオフィスのデスクで、デスクトップやノートパソコンを使って受講します。平均的なeラーニングのレッスン時間は、学習環境にもよりますが、15分から90分です。スマートフォンの画面を90分間見続けなければならない場合、どうでしょうか。目が疲れませんか?
そのため、モバイル端末向けに開発されたコンテンツは、学習者がスマートフォンでアクセスしやすいように、3分から5分程度の小さなユニットに分割する必要があります。そうすることで、学習者が列に並んでいる間や仕事の合間に学習できるようになります。
アウトプット方法の違い
eラーニングは、コースを実行するための特別なソフトウェアを必要とせず、ブラウザですぐに学習できますが、mラーニングは、iOS用とAndroidデバイス用の少なくとも2つのバージョンのアプリを必要とします。
お伝えしたように、eラーニングコースは、モバイルブラウザを利用しモバイルデバイスで閲覧することができます。では、コンテンツを拡大表示する必要性は別として、なぜアプリが必要なのでしょうか?
ネイティブ・モバイルアプリケーションは、モバイル端末向けに設計されているため、ウェブアプリケーションにはないオペレーティングシステムのリソースや機能を利用できます。モバイルアプリは、カメラ、音声入力、バーコードスキャナー、その他の内蔵センサーにアクセスできるため、一般的にユーザーエクスペリエンスがよりスムーズになります。また、mラーニングアプリには、コースをオフラインで受講したり、進捗状況を保存したり、バックグラウンドでプロセスを実行したりする機能なども含まれます。
一言で言えば、mラーニングはeラーニングの小型携帯版ではなく、研修の内容に影響を与える全く異なる学習媒体です。
モバイルラーニングと社員教育
あなたは、社員研修でのeラーニングの実践にすでに慣れているかもしれませんし、会社でオンライン研修プログラムを受講しているかもしれません。もしそうであれば、オフィスのデスクトップ PCを使って、仕事の合間にコースを受講しているのではないでしょうか。しかし、現場で働く営業担当者や出張の多い人にとっては、一か所に座っていることは難しいです。
モバイルラーニングは、このような移動の多い従業員の研修という課題に対処することができます。あなたの会社でmラーニングを活用できるいくつかの方法を見ていきましょう。
■ 営業チームの研修
顧客とのコミュニケーション方法に関するコースで知識を深めましょう。また、小さなユニットに分けたコースを作成することで、営業チームがタイトなスケジュールに合わせ、顧客とのミーティングの合間に学習できます。営業担当者は、製品仕様をナビゲートしたり、必要な販売データを探したり、顧客の質問に対する答えを瞬時に見つけられるようになります。
■ 製品研修
自社の製品、機能、アップデートなどに関する一貫した製品研修を、従業員がどこにいても全員に提供できます。モバイルラーニングを利用すれば、全従業員にすべての新機能をすぐに知らせることができ、従業員はスマートフォンでこれらの情報にアクセスし、常に最新の情報を得られます。
■ ソフトスキル研修
勤務時間外に学習者にコースを受講してもらう場合、学習者に負担をかけず、1日の終わりに認知的過負荷を引き起こさないコースや教材を使用したほうがいいです。コミュニケーションスキルや問題解決テクニックに関するコースは、より「ソフト」で、自己啓発に向いており、小さなフォーマットで簡単に提供できるため、従業員の娯楽の一部として自然に取り入れることができます。
特定のタスクの実行方法や特定の状況への対処方法について、継続的にアクセスできるメモや指示を学習者に提供することは役立ちます。例えば、ITセキュリティや火災安全のメモをアップロードしておけば、学習者はすぐに参照できます。
■ 新人研修
企業文化の紹介、オリエンテーションプログラムの設定など、初日までに職務に関する初期指導を行うことができます。学習者は出社前にスマートフォンで必要な情報を学習でき、担当スタッフは導入や説明の時間を節約できます。
企業におけるモバイルラーニング導入事例をいくつか見ていきましょう。
社員教育におけるモバイルラーニングの例
モバイルラーニングを導入している企業をいくつかご紹介します。彼らは、mラーニングのアプリやテクノロジーを使って、顧客、パートナー、従業員を教育し、知識を広く共有しています。
・ジョンソン・エンド・ジョンソン
・ハネウェル
・オーティコン
・FYMCA
ジョンソン・エンド・ジョンソン
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、世界中の医療従事者を対象としたオンライン大学を設立しました。ジョンソン・エンド・ジョンソン・インスティテュートはオンラインプラットフォームで、学習者は一般的な教育コンテンツと個別の教育コンテンツの両方にアクセスでき、遠隔手術指導のセッションに参加することもできます。
これは、医療従事者が同社の製品を使用する際に、リアルタイムのビデオ通話サポートをリクエストできることを意味しています。彼らは同僚と協力し、術中指導を受け、モバイル機器やノートパソコンでビデオフィードを見ることができます。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、技術革新と開発に関するポッドキャストでもよく知られています。これらの放送は、公共の福祉や医療に関する最新の知識をコンパクトに提供することを目的としています。人々は外出先でこれを聴き、現在のトレンドについてより深く知ることができます。
ハネウェル
ハネウェル社は、航空宇宙、建設、化学製造、安全とセキュリティソリューションや、倉庫の商業用不動産の分野で革新的な取り組みを行っています。同社は、顧客向けにオンデマンドのモバイル研修を提供し、製品の専門知識を向上させ、コンプライアンス要件への適合を支援しています。例えば、ハネウェルはシミュレーターアプリを作成し、拡張現実(AR)で設備検査に関する顧客の研修を行っています。
また、ハネウェルの従業員やディーラーは、営業研修でモバイルラーニングの機会を活用し、スマートフォンで短いオンラインコースを受講することもできます。
オーティコン
オーティコンは世界的な補聴器メーカーで、モバイルラーニングを利用して国内外にいるアカウントマネージャーの研修を行っています。オーティコンでは、アカウントマネージャーをはじめとする現場の従業員に対して、オーティコンが提供する製品に関する高度な研修を行う必要があります。しかし、彼らはタイトなスケジュールで、異なるタイムゾーンで働いています。
オーティコンは、現場での一貫した柔軟な研修のためにiSpring Learn Appを活用しています。このアプリにより、学習者はコースをダウンロードしてオフラインでアクセスでき、ビジネスフライト中でも学習可能です。学習者は最新のアップデートや製品機能を常に把握し、真に有意義な顧客サービスを提供することができます。iSpring Learnのレポートにより、チームは各従業員の研修の進捗状況を確認し、パフォーマンスを評価することができます。
FYMCAメディカル
FYMCAメディカルは、慈善事業の分野で活躍している企業で、低所得国の医療に関するコンサルティングサービスを提供しています。FYMCAは、アフリカ諸国や世界中の医療専門家に研修を提供するため、30種類のオンラインコースからなる1年間の研修プログラムを作成しました。
遠隔地や貧しい地域の医師は、海外で開催される研修や医学会議に参加する余裕がありませんが、iSpring Learnアプリにアクセスすれば、どこにいても研修プログラムを学ぶことができます。各コースは最長45分で、知識評価も含まれています。FYMCAのコーディネーターは、iSpring Suiteを使用し自分でコースを構築しています。また、利用者のスコアを見ることもでき、学習者がコースを通してどのように進歩したかを追跡するのに役立ちます。
モバイルラーニングは、FYMCAが、希少疾病と闘い、地域社会の生活を向上させる準備が整った、十分な訓練を受けた献身的な医療専門家を育成するのに役立っています。
次に、モバイル化する価値がある状況について考えてみましょう。
社員研修でモバイルラーニングを活用する理由
今から、社員研修でモバイルラーニングを活用する指標をご紹介します。あなたの会社の状況と照らし合わせながら見てください。
多くの仕事では、特定の職場があるわけではありません。営業マン、コンサルタント、運輸・保守サービス従事者などは外出することが多いため、モバイルラーニングはすでに彼らのワークスタイルに適合しています。
企業によって、チームが世界中に散らばっている、支店がある、あるいは社員が時々オフィスに来るなど、さまざまな状況が考えられます。インターネットのおかげで、従業員はカフェにいても、自宅のオフィスにいても、デッキチェアに座っていても、「仕事中」になり得ます。
ジェネレーションZ(1995年~2010年生まれ)は、最年少のメンバーがすでに11歳で、スマートフォンが目新しいものではなく、当たり前の世代です。
マルチタスク化が進む世界では、まず勉強し、後から知識を応用する従来の研修に割ける時間はかなり少なくなっています。モバイルラーニングは、仕事に役立つ知識を学習者がその場で学べ、時間の無駄をなくし、新しく得た知識をすぐに活用できるようにします。
mラーニングは、ゼロから何かを教えるための最良の選択肢ではないかもしれませんが、追加的なサポートとして大きな成果を示しています。モバイルラーニングは、ワークフローに組み込まれ、いつでもどこでも従業員を指導し、再教育するのに役立ちます。
テクノロジーは急速に変化し、新しい製品、サービス、アプローチが日々登場しているため、競争力を維持するには頻繁な研修が必要です。モバイルラーニングは、必要な時にリアルタイムで知識を提供することができます。
モバイルラーニングの作成と提供のためのソフトウェア
mラーニングの構成要素は、以下のように三角形で視覚化できます。
・eラーニング作成ツール
・学習管理システム(LMS)
・アプリ
それでは、それぞれの構成要素を詳しく見ていきましょう。
eラーニング作成ツールを使えば、学習者に学んでもらいたいコース、プレゼンテーション、動画講義、評価、シミュレーションなどが作成できます。そして、HTML5フォーマットで公開できます。
学習管理システム(LMS)は、研修コンテンツをアップロードし、学習者に割り当て、統計値をモニタリングし、レポートを作成する司令塔の役割を果たします。(ちなみに、まだLMSを使用していない場合は、学習管理システム(LMS)とは?知っておくべきことすべて解説や、LMSの選び方をご参考にご覧ください)
モバイルアプリケーションは、エンドユーザーがスムーズに学習できるようにするためにあります。アプリストアからアプリをモバイル端末にダウンロードし、インストールして、指定された教材を学習するために使用します。
iSpringのツールを例にとれば、mラーニングのエコシステムは以下のように構成されます。
・iSpring Suiteは、モバイル対応のコンテンツを簡単に作成できるeラーニング作成ツールです
・iSpring Learnが学習管理システムです
・iSpring LearnはiOSとAndroid用の無料モバイルアプリでもあります
モバイルラーニングコース作成の注意点
タブレットやスマートフォンなどのモバイル端末で考慮しなければならないのは、画面サイズが小さいということです。そのため、コース作成を始める前に考えておくべきポイントがいくつかあります。
入力方法
eラーニングコンテンツは、小さなマウスポインタで使えるように設計されていますが、mラーニングコンテンツは指で操作します。つまり、クリックできるインターフェイス要素はすべて大きくする必要があり、学習者がボタンやリンクをタップする際に余計な手間がかからないようにしなければなりません。
画面上のコンテンツ量
デスクトップの画面サイズは19インチから34インチまであります。それに比べて、現在iPhone史上最大のiPhone 14 Pro Maxの画面は6.7インチです。そのため、mラーニングコンテンツは派手な要素でピクセルを失う余裕はなく、最も重要なものだけを含めるべきです。以下のガイドラインを参考にしてください。
・コンテンツを小さな塊で提供する
・小さすぎる要素は含めない
・1画面1アイデア の黄金律に従う
mラーニングコンテンツ設計のコツについては、モバイルフレンドリーなオンラインコースを作成方法:必ず守るべき10のルールをご覧ください。
コンテンツフォーマット
まず、モバイルコースはHTML5という特定のフォーマットで公開する必要があります。技術的には、これによってどのモバイル端末でも利用できるようになります。次に、学習コンテンツはモバイルフレンドリーで、さまざまなスクリーンに適応し、デスクトップ、タブレット、スマートフォンのどこでも見栄えが良くなければなりません。iSpring Suiteは自動的にコースやクイズをモバイル対応にし、既存の教材をモバイルフレンドリーなHTML5コンテンツに変換します。
モバイルラーニングに関するよくある質問
モバイルラーニングに関するよくある質問をひとつずつ見ていきましょう。
・mラーニングとは?
mラーニングとは、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどの携帯端末を使った学習方法です。コース、クイズ、教育ビデオなどがオンラインでもオフラインでも一貫して利用できます。
・モバイルラーニングのメリットは?
モバイルラーニングを利用すれば、どこからでも、どんな環境からでも、新しい知識にアクセスできるようになります。また、さまざまな年齢層の学習者の関心を引きつけ、全く新しい学習体験を生み出します。
・モバイルラーニングのデメリットは?
モバイルラーニングはテクノロジーに依存しており、携帯電話の通信エリアの広さ、ワイヤレス接続、強力なプロセッサー、デバイスに十分なストレージが必要です。また、携帯電話はそれだけで気が散ることがあるため、学習者が集中力を維持できなければ、学習プロセスが役立たない可能性もあります。
・社員研修におけるmラーニングの活用事例にはどんなものがある?
mラーニングは、新人研修、製品研修、24時間いつでもアクセスできる企業知識ベースの作成、クイズやインタラクションによる新しいスキルの強化など、さまざまな研修やコースで活用されています。
最後に
mラーニングは、いつでもどこでも新しい知識を得て実践できる、柔軟かつ効果的な学習方法です。そして、iSpring Suiteを使えば、魅力的なモバイル対応コースを簡単に作成できます。iSpring Suiteを一度使ってみませんか?今なら無料トライアルが可能です。下記のバナーから簡単に無料版に登録できるので、ぜひお試しください。